ちょっとマニアックな美容医療

美容医療全般ついて解説

顎プロテーゼのリスク~骨にめり込む!?

 

美容外科では様々な部位にプロテーゼを使用します。

使用頻度が高い部位は鼻プロテーゼです。

次いで顎(オトガイ)が多いです。

今回は意外と知られていない顎プロテーゼの合併症について解説したいと思います。 

 

プロテーゼの合併症

まず、プロテーゼとは体内に埋入する人工医療材料のことを言います。

多くはシリコン製で、人工軟骨と言うこともあります。

その他にゴアテックスという人工硬膜を使用することもあります。

 

シリコンは生体親和性が高く、長年の使用経験もあり、長期間体内に留置しても安全と言われています。

主な合併症に感染、ズレ、石灰化、皮膚拘縮、皮膚菲薄化などがありますが、今回解説するのは“骨吸収”と言われるプロテーゼが骨にめり込む合併症についてです。

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骨吸収とは!?

骨吸収とは骨の破壊や萎縮、変形している状態のことを言います。

骨では常に、この“骨吸収”と“骨形成”をいう過程が行われています。

簡単に言うと、骨吸収とは古い骨を壊すこと、骨形成とは新しい骨を作ることです。

これを繰り返すことで骨は常に新しく生まれ変わっているのです。

しかし、プロテーゼを埋入することでこのバランスが崩れることがあります。

 

なぜ骨にめり込むの?

原因は2つあります。

1つめの原因はプロテーゼにかかるです。

通常プロテーゼはズレ予防のため骨に接着するように埋入します。

またアゴ先にはオトガイ筋という筋肉があります。

プロテーゼが骨とオトガイ筋に挟まれ、常に高い圧がかかることが原因です。

大きく硬いプロテーゼを入れると、より高い圧がかかります。

骨の上に圧がかかることで、骨形成より骨吸収が優位となります。

すると骨が脆弱となりプロテーゼがめり込み易くなるのです。

 

2つめの原因はアゴの骨(下顎骨)の構造によるものです。

下顎骨の表面は皮質骨という頑丈な骨で覆われており、その内部中央には海綿骨と呼ばれるスポンジ状の構造が存在します。

この海綿骨の構造がプロテーゼのめり込みをより容易にします。

 

同じプロテーゼでも鼻骨には筋肉による圧が少なく、海面骨の構造がないため、プロテーゼが骨にめり込むことはないです。

 

長々と説明しましたが、簡潔に言うと、

骨の内部構造が弱い部位に、高い圧がかかるとプロテーゼがめり込むのです。

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CTにて下顎骨へのプロテーゼの埋入を認める

 

解決策は?

根本的な解決方法はプロテーゼを抜去することです。

プロテーゼを抜去し骨への圧をなくすことで、骨にリモデリングという修復作業が起こります。

するとプロテーゼ抜去後に凹んでいた部位が再生し元の形に戻ります。

さらにプロテーゼ抜去前の形に戻すには、二期的に骨切りや人工骨によるオトガイ形成を行う必要があります。

 

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プロテーゼ抜去後のオトガイ形成

また簡易的な方法としてオトガイ筋にボトックスを打つ方法があります。

ボトックスと打つことで筋肉が緩み、プロテーゼへの圧を軽減でき、骨へのめり込みを緩和できます。

しかし、ボトックスは根本的な解決方法ではありません。

プロテーゼ抜去と違い、進行を止める程度の効果しかないです。

 

また、プロテーゼの位置によって骨吸収を最小限にできます。

下顎骨の先端(下縁)は骨梁と呼ばれるとても厚い皮質骨があり海綿骨がありません。

そのため骨吸収が起こりにくいです。

顎の先端のみにかつ、小さく柔らかいプロテーゼを入れるとめり込む可能性を抑えることができます。

 

ヒアルロン酸でも起こる!?

ヒアルロン酸でも同様の骨吸収が起こります

顎の骨膜上に長期間、硬めのヒアルロン酸を入れていると皮質骨に凹みが生じます。

原因はプロテーゼと同じですが、プロテーゼほど高い圧がかからないため軽度の凹みのことが多いです。

手術時に見つかることがあります。

 

 

以上、顎プロテーゼによる骨吸収について解説しました。

美容外科医でもまだまだ周知度が低い合併症です。

顎への安易なプロテーゼ留置やヒアルロン酸注入には注意が必要です。

口角挙上術

口角が上がっていると人に好印象を与えます。

また口元が引き締まり若く見られます。

逆に口角が下がっていると、老け顔、不機嫌、不満そう、怒っているといった誤解をされることがあります。

 

今回は口角を上げる施術、“口角挙上術”について解説したと思います。

 

口角の形を決める三大要素

口角の形状は主の下記の3つで決まります。

  1. 筋肉の動き
  2. 元々の唇の形や厚さ
  3. 周囲の皮膚のたるみ

口角挙上術とはこの三要素を変化させる施術です。

 

この中でも筋肉の動きが最大要因です。

 口角の動きには関わる筋肉には大頬骨筋、口角挙筋、口角下制筋があります。

大頬骨筋、口角挙筋の2つは横に引っ張る、口角を上げる作用があり、

口角下制筋は口角を下げる作用があります。

この3つの筋肉の動きのバランスで口角が動いています。

 

例えば笑うときは大頬骨筋と口角挙筋の働きが強くなり、口角下制筋の働きが弱くなるため口角が上がります。

また加齢とともに大頬骨筋と口角挙筋の筋力が衰えてくると自然に下がってきます。

また、無表情でも口角が上がっている人は、生まれつき大頬骨筋や口角挙筋の作用が強いか筋肉自体が短い、または口角下制筋の力が弱いなどが原因と考えられています。

(生まれながらに口角下制筋が弱く、口角の高さに左右差がある人もいます。)

 

 ヒアルロン酸による口角挙上術

口角挙上術の方法は主なものにヒアルロン酸、ボトックス、手術があります。 

 

まずヒアルロン酸についてです。

口角を上げるヒアルロン酸の注入方法は三種類あります。

  • 唇に直接打ち、膨らみを持たせることで上がった様な唇の形をつくる方法
  • 口角下の皮膚に打ち、下から口角持ち上げる方法
  • 周囲を皮膚のたるみを持ち上げて口角を上げる方法

いずれの方法も筋肉の動きは変えず、皮膚の変化量も少ないため、効果としてはやや弱い印象です。

打ち過ぎると口角の動きに硬さが出て不自然になることもあります。

 

ボトックスによる口角挙上術

次にボトックスです。口角下制筋にボトックスを打ちます。

前述の通り、口角下制筋は口角を下に引っ張っている筋肉です。

ボトックスでこの筋肉の作用を弱めると、代償的に大頬骨筋、口角挙筋に作用が強まり口角が上がりやすくなります。効果は“”程度です。

 

口角下制筋は悲しい顔、困り顔やしかめっ面をする時に口角を下げる作用があります。ボトックスが効きすぎてしまうと、例えば人に怒られている時も口角が下がらず、反省していないと思われるなんてこともありえます。

打ちすぎは良くないです。

 

ヒアルロン酸、ボトックスはお手軽で、効果も一時的なため取り返しがつくことがメリットでもあります。

 

手術により口角挙上術

次に手術による口角挙上術です。

口角部の赤唇と白唇の境界の皮膚を切除する方法と皮弁として皮膚を移動させる方法などがあります。

いづれの方法も赤唇と白唇の境界にキズが残ります。

 

現在もこれらの方法が大半のクリニックで行われていますが、、

個人的には皮膚を切る口角挙上術は時代遅れだと感じています。

赤唇と白唇の境は複雑な3D構造になっており、また色調もグラデーションがあります。

その部分のキズは割と目立つことがあります。

また開口時につっぱり感が残ることもあります。

 

最近では筋肉のみをタッキング(縫い縮め)する方法や、表にキズが残らない口腔内法が開発されており、今後の主流になると考えています。

 

 

 また 周りの皮膚のたるみを解消しないで、口角挙上手術をするとかえってほうれい線やマリオネットラインが強調されてしまうこともあります。

加齢による皮膚のたるみが原因で口角が下がっている場合は糸リフトや、外科的フェイスリフトなどで周囲の皮膚を上げると口角も自然に上がることがあります。

 

治療適応は?

忘れてはいけないことは、治療をしなくても表情筋を鍛えることで口角はある程度上がるということです。

ただし口角の上がり方には個人差がありますし、生まれ持った形もあります。 

 

自身で笑顔をつくってみて、理想の口角を作れる場合は積極的な手術適応はないです。

その形を意識し、表情筋を鍛えることで理想の口角に近づくためです。

その上でさらに変化を希望される場合は、まずはボトックスで形を安定させる、ヒアルロン酸で形を整えるなどの施術を試してみてもよいと思います。

 

筋肉を動かしても理想の形にならない場合や周囲のたるみも解消したい場合などは手術の適応があります。

 

口角挙上術のホントの恐さ

口角挙上術は別名“スマイルリフトと言われます。

整形に依存する人、整形を繰り返す人は笑顔が少なくなります。

静止画の美しさばかりを追求し、笑っても何ともいえない不自然さが現れます。

口角挙上術は人工的に笑顔をつくる訳ですから、その終着地とも言えます。

 

普段から笑顔のたえない人は年を重ねても口角が下がりづらく、なにより自然な上がり方をします

普段から笑っていられることが大事です。

切開二重のキズ気になりません?

「二重(ふたえ)にしたいけど切りたくない。」

カウンセリングの際によく耳にする言葉です。

今回は“切開二重(重瞼)術の“キズに焦点を当てて書きたいと思います。

 

 まぶたのキズってきれいになるの?

私自身、形成外科になりたての頃は上司から「まぶたのキズはきれいになる」と教わりました。

実際、まぶたのキズは他の部位よりきれいになります。

まぶたの皮膚は血流がよく、体で最も薄く、開瞼閉瞼でも緊張がかかりにくいなどの理由からです。

これに加えて高齢者では皮膚がたるみ、余裕があるためよりきれいになります。

 

しかし、それが術者の驕りにもつながります。

技量に関わらずキズがきれいになるケースを経験してしまうからです。

キレイになるからと言って、手を抜いて縫ってもよいことにはなりません。

そこを疎かにしてしまうと一定の割合でキズが目立つ結果になります。

まぶたの縫合はとても難しく、奥が深いです。

 

どれくらい目立つ?

まぶたのキズについて聞かれると

「二重の線に隠れる」「目を開けていればわからない」

と説明している先生も多いです。

“まぶたのキズはきれいになる”と述べたように、実際キズが目立つといってもほとんどメイクで隠せるレベルです。

 

そのレベルのキズを気にするかしないかは人それぞれと言ってしまえばそこまでなんですが、、

ただ男性だとメイクで隠しにくいです。

女性もずっとメイクをしているわけではないですよね。

スッピンで寝ている時は気にならないですか?

術者として目指すところは“スッピンで寝ている時でも気づかれないキズ”です。

 

キズのどこが気になるの?原因は?

切開二重術後のキズの相談で多い訴えは

  • ボコボコしている
  • 食い込み方が不均一
  • キズが白い
  • 周りの皮膚がヨレている        などです。

(目を開けた時の状態や左右差などについてはまた別で書けたらと思います。)

 

 これらは手術操作によって改善できるものがほとんどです。 

もちろん原因は他にもあります。

以前、人中短縮の記事でも述べたようにキズの目立ち易さは様々な要因により変わります。

年齢、人種、基礎疾患、内服薬、ケロイド・アトピー体質、メイクや花粉症で目を擦ってしまう、皮膚の緊張具合、術者の技量、術後トラブル有無など、、上げればきりがないです。

 

縫合方法の違いとポイント

 まぶたの縫合方法は先生によって千差万別です。

  • 針数を少なくラフに縫う
  • 針数を多く細かく縫う
  • 中縫いをする
  • 連続縫合をする
  • 皮膚と下の組織を一緒に縫う  

それぞれの先生のスキルやクセにマッチした縫合方法は様々です。

正解はないと思います。

ただし、外せないポイントもあります。

最後の縫合だけできれいになるものではありません。

縫合に至るまでの過程でも丁寧な手技が求められます。

 

丁寧な手技のために、まぶたの手術で拡大鏡を使うことは必須です。

これは目が良い悪いの問題ではなく、人の視力以上の能力が必要とされるからです。

 

手技で気をつけるべき主なポイントは

(形成外科的縫合の基本事項は大前提なので除きます)

  • 組織ダメージを最小限にする
  • 皮膚や組織の適度な切除量を見極める
  • 最後の縫合だけで二重をつくろうとしない    

これらの操作を怠ると皮膚と皮下組織との癒着が多くなり、

周りの皮膚を巻き込んで周囲にヨレた線ができたり、

目を閉じた時にも二重ラインが凹み、ボコつきや白い線として目立ちやすくなります。

 

まぶたの縫合が難しい理由

先程述べたように、まぶたの皮膚は体の中で一番薄いです。

さらにまぶたの皮膚はマツ毛に近いほど徐々に薄くなります。

これが縫合の際に難易度を上げています。

 

 キズをきれいに治すには縫合した切断面同士がピタッと合い、適度な血流を保ちつつ長時間安定していることが大事です。

 

皮膚が薄ければ縫合の際にキズ同士が接着する面積も小さくなります。

ラフに縫合しても見た目ではキズが合っているような錯覚が起こりやすいです。

 

また皮膚を切除した場合はマツ毛側と眉毛側で皮膚の厚みに差が生じます。

皮膚の切除量が多すぎると厚みの差も大きくなりますが、

ほんの2,3ミリ切除しただけでも拡大鏡を使用すると縫合時に差を感じます。

 

確実にキズ面同士が接着し、厚さの差を考慮して縫合できる技術がないと、

キズに段差が生じたり、将来的にボコつきや幅広の白い線になる可能性があります。

 

また細かく針数を多くすればいいという訳でもありません。

技術が伴っていない反復される手術操作は組織に負担をかけ、血流が悪くなり、結果、キズの目立ちやすさにつながります。

また細かく縫ってしまうと血や組織液を外に出すドレナージ効果も小さくなります。

ラフに縫い目を少なくする先生はその辺を考慮しているものと思われます。

 

しかし、縫い目が少ないということはキズ同士が接着していない箇所もできやすくなります。

術後キズが腫れている間も、腫れが引いてからもキズが常にピタッと接着させるには一定の針数は必要と考えます。

 

またキズを閉じる時の縫合だけで二重を作ろうとすると目を閉じた時のキズの凹みの原因になることがあります。

キズを閉じる前にある程度二重をつくっておくことで凹みを防ぎ、皮膚が固定されキズの綺麗さにもつながります。

 

 長々と説明しましたが、結局何が言いたいかと言いますと、まぶたの縫合は非常に繊細でマニアックさ満載だということです。

言葉では簡単ですが、これを体現するにはかなりの経験・技術を要します。

 

 先生選びのポイントは?

キズに関してだけ言えば、

SNSの症例写真で術後ノーメイクでキズをアップに載せている先生は以外と少ないです。

術後写真、できればノーメイクで目を閉じている症例などをみせてくれる先生をおすすめします。

もう一点は修正手術を多くされている先生です。

どの美容手術もそうですが難しい修正に手をつける先生は腕のいい先生が多いです。

 

最後に

まぶたのキズはきれいになります。

また、キズ痕に悩んでいる方もよりきれいになる可能性が高いです。

きちんとした手技さえ行えば、切開二重術においてキズ痕がハードルになることは少ないと思います。

 

 

 

埋没法と切開法

埋没法と切開法

 二重(ふたえ)をつくる手術は大きく分けて二つあります。 

“埋没法”と“切開法”です。

 

埋没法は皮膚の下に糸をかけて二重のクセをつける方法です。一方、

切開法は二重ラインで皮膚を切り、皮膚と下の組織を癒着させ二重をつくる方法です。

今回はこの2つの方法の違いについて解説したいと思います。

 

埋没法のメリットとデメリット

埋没法のメリットはなんと言ってもお手軽なことです。

  • 短時間で終わる
  • キズが残らない
  • 術後の腫れや内出血が少ない  

手技的にも比較的容易で、美容外科医がまず習得する手技の一つです。

 デメリット

  • 糸がとれてあと戻りする可能性
  • 糸玉の形が出ることがある
  • 糸玉のよる異物反応や角膜損傷
  • 皮膚の余りを取れない
  • 元々二重の人は三重になることがある 

 

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埋没法による二重術歴のある方です。一見、きれいな平行型に見えますが、三重になっています。埋没法の適応を見誤り、無理に幅を広げるとこのような三重ができることがあります。

切開法のメリットとデメリット

メリット

  • 半永久的な効果が期待できる
  • 様々な二重の形にも対応可能
  • 脱脂術や挙筋短縮術(眼瞼下垂手術、黒目形成)も併せて行える      (埋没法による挙筋短縮もありますが個人的には不確実な手技だと考えています。)

 デメリット

  • 腫れや内出血のダウンタイムが長い
  • 抜糸が必要
  • キズ痕が残る
  • 施術・修正時の手技的難易度がやや高い 

切開法のキズについては次回の記事で詳しく書きたいと思います。

 

埋没法の進歩

埋没法には100年以上の歴史があり、今では様々な方法が開発されています。

内出血や腫れを予防するため特殊な針の使用や、麻酔量を少なくする工夫がなされています。

また糸がとれない様に糸の通し方や絡ませ方・結び方を変えた方法や、

皮膚側に結び目が来ないように結膜側で結ぶ方法などが考案されました。

 

特に糸がとれづらくなったことで埋没の利点を残しつつ、切開法に近い効果を再現できるようになりました。

 

以前は幅広い二重や平行型を希望された場合は、糸に負担がかかりとれやすいと言われていました。

しかし上記の改善により糸がとれづらくなり、埋没法の適応が広がりつつあります。

手術時間や手技的難易度に関してはほぼ従来のままです。

 

埋没法の限界

そんな埋没法ですがまだまだ万能ではありません。

進歩はしているけど進化はしていないのが現状です。

どんなに工夫しても糸の強度には限界があります。

絶対とれない埋没法はありません。

  • まぶたが厚い
  • 極端に幅広い二重を希望する
  • メイクや花粉症、枕で目を擦ってしまう

これらに該当する人は糸に負担がかかりやすく、手術方法に関わらず糸の緩みやとれる原因になります。

 

また皮膚のたるみや組織の厚さの解消は難しいです。

特に二重のラインよりマツ毛側のたるみや厚さが解消されず、いわゆる 

“ハム状態”(ハムを糸で結んだような不自然な膨らみや、食い込み)になることがあります。

(二重ラインより眉毛側のたるみであれば眉下皮膚切除で解消することができます。) 

 

埋没法修正時の問題点

糸がとれづらくなったということは修正も難しくなったということです。

例えば糸を複雑に絡ませて二重の強度を上げている方法では、

修正時に前回の糸が邪魔をし二重ラインがきれいにでないことがあります。

また糸を取り出すことも難しく、切開法にならざるを得ないこともあります。

 

よって埋没法による修正は1回に留めておくことをおすすめします。

2回以上しても改善は難しく、皮下に糸がどんどん増える結果となります

無理に再度埋没法で修正しようとしても、さらに予定外の二重ラインができたり、ボコ付きなど不自然さの原因になります。

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埋没法による予定外重瞼線の方です。埋没法後に多い目頭側のみ三重になっているケースです。切開法にて修正しました。睫毛側皮膚のたるみや蒙古ヒダの形を見極めずに埋没法を行うと、このような予定外重瞼線ができることがあります。

 

埋没法の修正を埋没法で行う場合は、糸が取り出せた場合や、前回の二重のクセが影響しない場合、たまたま片方のみ外れてしまった場合など限られケースに留めるべきだと考えます。

 

切開法か埋没法か

術者が埋没法と切開法のどちらが適当か見極めるポイントは主に4つです。

  1. 元々の二重のライン、クセがあるか
  2. 希望の二重幅と形(末広型、平行型、中間型、奥二重など)
  3. 皮膚や皮下組織の厚さ(はれぼったさ)
  4. 蒙古ヒダのかたち、大きさ

これらを考慮しどちらが適しているかを判断します。

 

“自然さ”がでる二重は人それぞれ大体決まっています。

きちんとしたシュミレーションと手順を踏めば、そんなに差はでないです。

その中で、さらに幅を広くしたい、平行型にしたい等の希望があれば微調整をします。

“自然さ”からかけ離れた形を希望されない限り、収まるところに収まります。

 

その自然さを出すためにどちらの方法が良いかは一概には言えないです。だたし、 

  • 皮膚が薄い
  • たるみがない
  • 自然な末広型を希望
  • もともと二重のクセがあり、さらにクッキリしたい

という人は埋没法のよい適応と言えます。一方、

  • まぶたが厚い(腫れぼったい)
  • 皮膚のたるみや膨らみ、腫れぼったさを解消したい
  • 黒目を大きくみせる手術も同時にしたい

 という人は最初から切開法をおすすめすることが多いです。

 

二重の形だけで言えば、埋没法の二重はすべて切開法でもつくれますが、

切開法でしかつくれない二重があります。

これは個人的な感覚ですが、 埋没をすすめる場合は、

“(切開の方が確実だけど、)埋没でも大丈夫そう” という感覚です。

  

先生選びのポイントは ?

まず大前提に、どちらの方法も満遍なく経験している先生です。

万が一あとから修正したいと思った時でも、そのような先生は切開法でリカバリーできるという強みがあります。

 

また一般的なメリット・デメリットの他に、自分が希望する二重には

なぜこの方法がよいのか納得のいく説明をしてくれる先生がいいと思います。

切開法に自信のない先生はキズやダウンタイムばかり言い訳にして

最初から埋没法を強くすすめる傾向にあります。

反対に切開ばかりしている先生は、「糸はとれる」と埋没法のデメリットを強調します。

 

 二重術は術者に技量に関わらず見た目が激変する手術です。

ばっちりメイクをされた症例写真ばかりに誤魔化されないで下さい。

 

 

以上、埋没法と切開法について簡単に解説してみました。

埋没法の進歩により適応が広がり、二重術がお手軽な時代になりました。

しかし切開法の適応も依然として変わらないのが現状です。

術者として大事なことは、埋没ではつくれない二重、とれやすそうなまぶたを見極めて、切開法を提案してあげることだと考えています。

人中短縮術ってどうなの?

初投稿です。

都内で美容外科医をしています。

術者ならではのちょっとマニアックな美容医療について書いていきたいと思います。

 

初回は『人中短縮手術』について解説したいと思います。 

 

 

そもそも『人中』って何?

『人中』と書いて『にんちゅう』と呼びます。『じんちゅう』じゃないです!

上唇の真ん中の部分で、鼻の下の凹みとその周りの盛り上がりのことです。

この人中の長さや形は人それぞれ違います。

 

人中短縮術って何?

文字通り人中を短くする手術のことです。上口唇短縮手術と言うこともあります。

人中短縮術自体は古くから報告があり、欧米では『リップリフト』と呼ばれることが多いです。

美容外科業界ではここ数年で日本、韓国、中国を中心としたアジア圏で周知されるようになり流行っている印象です。

 

なぜ人中を短縮するといいの?

猿やチンパンジーなどのホ乳類はだいたい人中が長いです。

世間で猿顔と言われている人は、人中が長いか、形がはっきりしている人が多いです。

また、「鼻の下が伸びている」といる言葉があるように、間の抜けた顔の印象を与えることもあります。

 

人中を短縮することで、口周りがすっきりし、面長な顔を小さく見せる効果があります。

また赤い唇がやや上を向くことで唇の立体構造が強調されます。

それにより鼻から唇にかけてのバランスがよくなり、きれいなラインを表現できます。

 

キズってきれいになるの?

人中短縮手術されたあとのキズについて多くの相談をうけます。

キズの幅が広い」、「ケロイドになった」、「鼻の穴が不自然になった」など相談内容は様々です。

キズが目立ってしまう原因は色々ありますが主なものを上げると

・体質

・術者の技量    

 ・術後トラブル です。

どれか一つが原因のこともありますし複合的な結果キズが目立つ様になることもあります。

 

唇は食事や会話などの日常性生活で必ず動いてしまう部位です。

普通キズが安定する前に動かしすぎるとキズがきれいになりません。

なので唇のキズをきれいにするには、より丁寧な縫合技術が求められます。

 

またキズの相談をされる多くの方は、術者に「体質だからしょうがない」と言われることも多いようです。

ですが実際は体質ではなく、術者の技量によることが多く、きれいに縫いなおせば改善するケースを散見します。

そのような方の修正手術を行うと、筋肉が全く処理されておらず皮膚だけを切って縫われているケースが多いです。

 

また鼻の穴の形も重要です。

人中短縮をしてもキズの一部が鼻の穴の中に隠しやすいと形があります。

そうでない方は、より直線的に皮膚が切られてしまい目立ちやすくなります。

 

大事なのは“口輪筋”

唇には皮膚の下に口輪筋(こうりんきん)をいう筋肉があります。キズをきれにするにはこの口輪筋と皮膚の剥離、切除部位、切除量、固定する方法など様々な手技をクリアしないといけません。

 

形成外科には口唇裂という生まれながらに唇が割れている子の手術をすることがあります。

生後数ヶ月の赤ちゃんの唇の手術なので、いかにキズをきれいにするか長年研究されてきました。

の際に口輪筋の処理を必ず行います。

この時の筋肉の固定方法と人中短縮の際の固定方法はとても似ています。

最近では、皮膚切除をより少なくして筋肉のつり上げのみで効果をだす方法も考案されています。

 

口輪筋を制する者は唇形成を制す!?

口輪筋をうまく処理できれば人中の形も変えることができます。

そのような手術を人中形成術と言います。

詳しくは割愛しますが、凹みを浅くしたり、深くしたり、またアヒル唇のようにロールさせたり様々なことが可能です。

最近ではヒアルロン酸などのフィラーでの人中形成が流行っていますが、フィラーでは凹ましたりすることはできません。

 

他のデメリットは?

一番問題になるデメリットは元の長さに戻すことは難しいということです。

できなくはないのですが、、さらにキズが多くなります。

 

またもともとガミースマイルのある方は悪化することもあります。

うまく口を閉じられなくなり 前歯だけ出たウサギの様な口元になることもあります。

また面長の原因が骨格性要素が強い方は、骨切りをしないと改善が乏しいこともあります。

 

カウンセリングのポイント

人中短縮手術を考えている方はカウンセリングの際に

 

・まず自分に適応があるか

・どのような唇にしたいか

・口輪筋はどうするのか

・術者が唇の手術になれているか

 

などの点に注意して聞いてみるとよいかもしれませんね。

 

 

以上、人中短縮手術について簡単ですが解説しました。

個人的な意見ですが、上手くいけば印象がかなり変わり満足度が高い反面、術者の技量により結果が左右されやすく、修正が難しい手術の一つです。

適応をしっかり見極めて行うことをおすすめします。