人中短縮術ってどうなの?
初投稿です。
都内で美容外科医をしています。
術者ならではのちょっとマニアックな美容医療について書いていきたいと思います。
初回は『人中短縮手術』について解説したいと思います。
- そもそも『人中』って何?
- 人中短縮術って何?
- なぜ人中を短縮するといいの?
- キズってきれいになるの?
- 大事なのは“口輪筋”
- 口輪筋を制する者は唇形成を制す!?
- 他のデメリットは?
- カウンセリングのポイント
そもそも『人中』って何?
『人中』と書いて『にんちゅう』と呼びます。『じんちゅう』じゃないです!
上唇の真ん中の部分で、鼻の下の凹みとその周りの盛り上がりのことです。
この人中の長さや形は人それぞれ違います。
人中短縮術って何?
文字通り人中を短くする手術のことです。上口唇短縮手術と言うこともあります。
人中短縮術自体は古くから報告があり、欧米では『リップリフト』と呼ばれることが多いです。
美容外科業界ではここ数年で日本、韓国、中国を中心としたアジア圏で周知されるようになり流行っている印象です。
なぜ人中を短縮するといいの?
世間で猿顔と言われている人は、人中が長いか、形がはっきりしている人が多いです。
また、「鼻の下が伸びている」といる言葉があるように、間の抜けた顔の印象を与えることもあります。
人中を短縮することで、口周りがすっきりし、面長な顔を小さく見せる効果があります。
また赤い唇がやや上を向くことで唇の立体構造が強調されます。
それにより鼻から唇にかけてのバランスがよくなり、きれいなラインを表現できます。
キズってきれいになるの?
人中短縮手術されたあとのキズについて多くの相談をうけます。
「キズの幅が広い」、「ケロイドになった」、「鼻の穴が不自然になった」など相談内容は様々です。
キズが目立ってしまう原因は色々ありますが主なものを上げると
・体質
・術者の技量
・術後トラブル です。
どれか一つが原因のこともありますし複合的な結果キズが目立つ様になることもあります。
唇は食事や会話などの日常性生活で必ず動いてしまう部位です。
普通キズが安定する前に動かしすぎるとキズがきれいになりません。
なので唇のキズをきれいにするには、より丁寧な縫合技術が求められます。
またキズの相談をされる多くの方は、術者に「体質だからしょうがない」と言われることも多いようです。
ですが実際は体質ではなく、術者の技量によることが多く、きれいに縫いなおせば改善するケースを散見します。
そのような方の修正手術を行うと、筋肉が全く処理されておらず皮膚だけを切って縫われているケースが多いです。
また鼻の穴の形も重要です。
人中短縮をしてもキズの一部が鼻の穴の中に隠しやすいと形があります。
そうでない方は、より直線的に皮膚が切られてしまい目立ちやすくなります。
大事なのは“口輪筋”
唇には皮膚の下に口輪筋(こうりんきん)をいう筋肉があります。キズをきれにするにはこの口輪筋と皮膚の剥離、切除部位、切除量、固定する方法など様々な手技をクリアしないといけません。
形成外科には口唇裂という生まれながらに唇が割れている子の手術をすることがあります。
生後数ヶ月の赤ちゃんの唇の手術なので、いかにキズをきれいにするか長年研究されてきました。
その際に口輪筋の処理を必ず行います。
この時の筋肉の固定方法と人中短縮の際の固定方法はとても似ています。
最近では、皮膚切除をより少なくして筋肉のつり上げのみで効果をだす方法も考案されています。
口輪筋を制する者は唇形成を制す!?
口輪筋をうまく処理できれば人中の形も変えることができます。
そのような手術を人中形成術と言います。
詳しくは割愛しますが、凹みを浅くしたり、深くしたり、またアヒル唇のようにロールさせたり様々なことが可能です。
最近ではヒアルロン酸などのフィラーでの人中形成が流行っていますが、フィラーでは凹ましたりすることはできません。
他のデメリットは?
一番問題になるデメリットは元の長さに戻すことは難しいということです。
できなくはないのですが、、さらにキズが多くなります。
またもともとガミースマイルのある方は悪化することもあります。
うまく口を閉じられなくなり 前歯だけ出たウサギの様な口元になることもあります。
また面長の原因が骨格性要素が強い方は、骨切りをしないと改善が乏しいこともあります。
カウンセリングのポイント
人中短縮手術を考えている方はカウンセリングの際に
・まず自分に適応があるか
・どのような唇にしたいか
・口輪筋はどうするのか
・術者が唇の手術になれているか
などの点に注意して聞いてみるとよいかもしれませんね。
以上、人中短縮手術について簡単ですが解説しました。
個人的な意見ですが、上手くいけば印象がかなり変わり満足度が高い反面、術者の技量により結果が左右されやすく、修正が難しい手術の一つです。
適応をしっかり見極めて行うことをおすすめします。