ちょっとマニアックな美容医療

美容医療全般ついて解説

切開二重のキズ気になりません?

「二重(ふたえ)にしたいけど切りたくない。」

カウンセリングの際によく耳にする言葉です。

今回は“切開二重(重瞼)術の“キズに焦点を当てて書きたいと思います。

 

 まぶたのキズってきれいになるの?

私自身、形成外科になりたての頃は上司から「まぶたのキズはきれいになる」と教わりました。

実際、まぶたのキズは他の部位よりきれいになります。

まぶたの皮膚は血流がよく、体で最も薄く、開瞼閉瞼でも緊張がかかりにくいなどの理由からです。

これに加えて高齢者では皮膚がたるみ、余裕があるためよりきれいになります。

 

しかし、それが術者の驕りにもつながります。

技量に関わらずキズがきれいになるケースを経験してしまうからです。

キレイになるからと言って、手を抜いて縫ってもよいことにはなりません。

そこを疎かにしてしまうと一定の割合でキズが目立つ結果になります。

まぶたの縫合はとても難しく、奥が深いです。

 

どれくらい目立つ?

まぶたのキズについて聞かれると

「二重の線に隠れる」「目を開けていればわからない」

と説明している先生も多いです。

“まぶたのキズはきれいになる”と述べたように、実際キズが目立つといってもほとんどメイクで隠せるレベルです。

 

そのレベルのキズを気にするかしないかは人それぞれと言ってしまえばそこまでなんですが、、

ただ男性だとメイクで隠しにくいです。

女性もずっとメイクをしているわけではないですよね。

スッピンで寝ている時は気にならないですか?

術者として目指すところは“スッピンで寝ている時でも気づかれないキズ”です。

 

キズのどこが気になるの?原因は?

切開二重術後のキズの相談で多い訴えは

  • ボコボコしている
  • 食い込み方が不均一
  • キズが白い
  • 周りの皮膚がヨレている        などです。

(目を開けた時の状態や左右差などについてはまた別で書けたらと思います。)

 

 これらは手術操作によって改善できるものがほとんどです。 

もちろん原因は他にもあります。

以前、人中短縮の記事でも述べたようにキズの目立ち易さは様々な要因により変わります。

年齢、人種、基礎疾患、内服薬、ケロイド・アトピー体質、メイクや花粉症で目を擦ってしまう、皮膚の緊張具合、術者の技量、術後トラブル有無など、、上げればきりがないです。

 

縫合方法の違いとポイント

 まぶたの縫合方法は先生によって千差万別です。

  • 針数を少なくラフに縫う
  • 針数を多く細かく縫う
  • 中縫いをする
  • 連続縫合をする
  • 皮膚と下の組織を一緒に縫う  

それぞれの先生のスキルやクセにマッチした縫合方法は様々です。

正解はないと思います。

ただし、外せないポイントもあります。

最後の縫合だけできれいになるものではありません。

縫合に至るまでの過程でも丁寧な手技が求められます。

 

丁寧な手技のために、まぶたの手術で拡大鏡を使うことは必須です。

これは目が良い悪いの問題ではなく、人の視力以上の能力が必要とされるからです。

 

手技で気をつけるべき主なポイントは

(形成外科的縫合の基本事項は大前提なので除きます)

  • 組織ダメージを最小限にする
  • 皮膚や組織の適度な切除量を見極める
  • 最後の縫合だけで二重をつくろうとしない    

これらの操作を怠ると皮膚と皮下組織との癒着が多くなり、

周りの皮膚を巻き込んで周囲にヨレた線ができたり、

目を閉じた時にも二重ラインが凹み、ボコつきや白い線として目立ちやすくなります。

 

まぶたの縫合が難しい理由

先程述べたように、まぶたの皮膚は体の中で一番薄いです。

さらにまぶたの皮膚はマツ毛に近いほど徐々に薄くなります。

これが縫合の際に難易度を上げています。

 

 キズをきれいに治すには縫合した切断面同士がピタッと合い、適度な血流を保ちつつ長時間安定していることが大事です。

 

皮膚が薄ければ縫合の際にキズ同士が接着する面積も小さくなります。

ラフに縫合しても見た目ではキズが合っているような錯覚が起こりやすいです。

 

また皮膚を切除した場合はマツ毛側と眉毛側で皮膚の厚みに差が生じます。

皮膚の切除量が多すぎると厚みの差も大きくなりますが、

ほんの2,3ミリ切除しただけでも拡大鏡を使用すると縫合時に差を感じます。

 

確実にキズ面同士が接着し、厚さの差を考慮して縫合できる技術がないと、

キズに段差が生じたり、将来的にボコつきや幅広の白い線になる可能性があります。

 

また細かく針数を多くすればいいという訳でもありません。

技術が伴っていない反復される手術操作は組織に負担をかけ、血流が悪くなり、結果、キズの目立ちやすさにつながります。

また細かく縫ってしまうと血や組織液を外に出すドレナージ効果も小さくなります。

ラフに縫い目を少なくする先生はその辺を考慮しているものと思われます。

 

しかし、縫い目が少ないということはキズ同士が接着していない箇所もできやすくなります。

術後キズが腫れている間も、腫れが引いてからもキズが常にピタッと接着させるには一定の針数は必要と考えます。

 

またキズを閉じる時の縫合だけで二重を作ろうとすると目を閉じた時のキズの凹みの原因になることがあります。

キズを閉じる前にある程度二重をつくっておくことで凹みを防ぎ、皮膚が固定されキズの綺麗さにもつながります。

 

 長々と説明しましたが、結局何が言いたいかと言いますと、まぶたの縫合は非常に繊細でマニアックさ満載だということです。

言葉では簡単ですが、これを体現するにはかなりの経験・技術を要します。

 

 先生選びのポイントは?

キズに関してだけ言えば、

SNSの症例写真で術後ノーメイクでキズをアップに載せている先生は以外と少ないです。

術後写真、できればノーメイクで目を閉じている症例などをみせてくれる先生をおすすめします。

もう一点は修正手術を多くされている先生です。

どの美容手術もそうですが難しい修正に手をつける先生は腕のいい先生が多いです。

 

最後に

まぶたのキズはきれいになります。

また、キズ痕に悩んでいる方もよりきれいになる可能性が高いです。

きちんとした手技さえ行えば、切開二重術においてキズ痕がハードルになることは少ないと思います。